2006/3/30掲載
2008/4/30更新

二風谷ダム・二枚の舌でコンテスト総なめ


 二風谷ダム管理所は、2003年台風15号洪水の対応において、平成15年度ダム・堰等管理業務顕彰、また平成15年度北海道開発局長賞を受賞しています。しかし、この応募内容、受賞理由には重大な問題があります。

 ここでは、「平成15年度ダム・堰等管理業務顕彰」関連書類から、現場の事実と照らし合わせながら、その内容を検証します。


■「平成15年度ダム・堰等管理業務顕彰」応募書類および受賞理由

【管理所名】
 二風谷ダム

【概要】
 当ダム管理所は、平成15年8月台風10号出水時において、計画規模を超える洪水に対し適切なダム操作を実施し、結果的に下流の洪水被害を最小限にとどめる効果をもたらした。

 ・定率定量 → ただし書き操作へのスムーズな移行と適切な操作。
 ・ダム本体の安全を確保するとともに、下流河川への被害を最小限に。
 ・洪水調節時、停電があったが、予備発電の手動起動により適切なゲート操作を確保。

二風谷ダムの適切な洪水調節操作
 最大放流量放流後の洪水後期は、下流の水位観測所において計画高水位を超過しており、破堤の危険性があった。そのため、計画規模を超える洪水の操作水位以上においても、放流量を流入量と同量程度とする操作を行うことにより放流量を減らし、下流での浸水被害軽減をもたらした。

 また、洪水調節中(10 日 0 時前後)に、商用電源が短時間に停・復電を繰り返す不安定な状態になったが、強制的に予備発電機からの電源供給に切り替えた結果、その後の商用電源の停電に影響されず安定した電源供給が可能となり、適正なダム管理に貢献した。
 なお、当管理所では日頃から停電時の危機管理対策として、商用電源から予備発電機への切り替え訓練を実施しており、今回の対応も訓練の成果を生かし適正に実施できたものと評価される。


■検証

●ダム操作
 二風谷ダムの通常洪水時の洪水調節は、上に述べられているような「定率定量」方式ではありません。定率定量方式のダム操作は、貯水位とその変化、ゲート開度に応じてそのときどきの流入量、放流量を算定し、それに基づいてゲート開度を決定するという、複雑な計算とゲート操作が要求されます。
 二風谷ダムの洪水調節は、通常の洪水調節時には「自然調節式」であり、ゲート開度は固定であり、一切の操作を行わないものです。したがって定率定量方式よりも、ダム管理は大幅に簡単なものとなっています。
 満水以後のただし書き操作においても、二風谷ダムは単に貯水位に応じて、あらかじめ定められたマニュアルどおりにゲートを開くだけであり、基本的に人為判断は要求されません。

 なお、下流自治体から放流を抑えるように要請を受けた10日3時50分以後には、それまでなぜか最大開度(5.5m)で放置されていたオリフィスゲートを絞り、流入量を計算しながらそれに合わせてゲート放流を行うといった、二風谷ダムとしては変則的な放流方法に切り替えています。
 これについて、「マニュアルどおりの放流では放流量が多くなりすぎる」と、当時の竹内治水課長は後から説明していました。まずダムの操作規則に問題があるのかもしれません。

●停電対応
 2003年洪水時に、二風谷ダムでは8月9日23時46分頃より停電に見まわれ、約15分間にわたってダムの総合管理用コンピュータシステム(ダムコン)が停止しました。計画を上回る洪水の流入によって、ダム貯水位が急上昇する中、30分にわたってダムの水位、流量等の全てのデータを得ることができなくなっていました。また自家発電に切り替えた後も、水位計からの生データ等を記録することができませんでした。このため、該当時間内の流量等のデータはなく、発表されているものも、後から推定した数値となっています。※ダムコンの解説
 
 電源の切り換えが、管理所が述べるように、停電前に適切に行われていたならば、ダムにとって致命的なダムコンの停止、それによるデータの欠落などは生じないはずです。
 先に述べたように、二風谷ダムは、通常の洪水調節中は、ゲート操作を必要としない自然調節式ダムとして運用されます。停電中はゲート操作を必要としない時間帯であったこと、また貯水位を計測しながらゲートを開く「ただし書き操作」の前に、ダムコンを復旧できたのは幸いでした。

 もしもただし書き操作の直前、または最中に、このような停電が生じた場合、ダム貯水位と流量の正確な把握ができず、正確なゲート操作が不可能になります。二風谷ダムはゲート規模と放流量が大きいため、過放流によって下流の被害を増長させる危険、ただし書き操作によって回避すべきダムの越流が生じる危険がありました。

 地元では、ダム管理所は自力でダムコンを復旧することができず、地元の管理会社を呼んだものの、土砂崩れのためにダムまで通行できなかったことから、携帯電話で指示を受けながら、何とか復旧に成功した、といわれています。これは「噂話」の粋を出ませんが、当時の状況と整合性があり、単純な作り話とも思えません。

 二風谷ダム管理所は、やっていないことをやったといい、できなかったことをできたといって、開発局局長賞、管理業務顕彰を受賞しているのではないでしょうか。


 このような表彰は開発行政の内輪受けにすぎず、基本的には相手にするまでもない、つまらないものだと思います。
 しかしながら、ダム計画の住民対応などでしばしば問題になる「行政の二枚舌」は、行政内部においても恒常的に行われており、かつ行政自身がそのチェックを行うことができないことが明らかになったという意味で、非常に興味深いできごとであったといえるでしょう。

 ダム行政に対する国民の信頼を回復したいのならば、まずはこのような、骨身に染み付いた二枚舌体質を改善することが必要です。


【2008/2/27 追記】

 二風谷ダムは、洪水調節を行う際に、事前放流を行うよう操作規則の変更を行ったとして、平成17年度にも「ダム・堰等管理業務顕彰」を受けています。しかし翌年8月の台風10号洪水の際には、この事前放流操作は行われませんでした。

 また、平取ダム建設計画に関する道内の自然保護7団体からの質問に、「停電時の対処」が取り上げられました(2007/12)。
 これに対する北海道開発局からの回答(2008/2)として、表賞理由である自家発電への移行が、適切にできていなかったこと、そしてこれがダムの管理上重要な問題であると認識していることが記述されました。
 一方、「表賞理由」の回答では、洪水中の停電時の対処については触れられていません。

北海道開発局開発局室蘭開発建設部『沙流川総合開発事業』WEBサイト「Q&A」より


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