解 剖・『 ペ ア ラ イ ン 』

まやかしの広報紙

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2004年4月に流域の一部で配付された広報パンフレット『鵡川・沙流川情報誌 ペア・ライン』創刊号。

今号の主企画は、「二風谷ダムの『なぜ?』『どうして?』大特集」「鵡川沙流川ペアライン構想」は1997年に設立されており、何と7年たってからの「情報誌」創刊である。

(ペアライン構想1)

(ペアライン構想2)


台風10号洪水の際、二風谷ダムの水位は、その治水能力の限界である「洪水時満水位」48m(標高)を超え、設計限界である「設計洪水位」まであと40cmと迫る49mまで水位が上がった。

設計洪水位に達すると、ダムの上から洪水がでたらめに溢れ出す危険な状態となる。

ダム下流の平取町では、「二風谷ダム決壊の恐れ」として避難勧告が出された。


『ペアライン』では、洪水がダムを越えて溢れ出してもあたかも無問題であるかのようなPR。
その根拠として、「国内で過去に溢れて壊れたダムはない」とする。

しかし、北海道開発局は下流被災住民に対する説明会において、「今までにダムが溢れた例はなく、何が起きるかわからない。ダムの手すりが曲るかもしれないし、管理所の床が浸水するかもしれない」と回答している。

これに対し被災者側は、「ダムの手すりや管理所を汚したくないがために、下流の家や農地300haを泥水に沈めたのか?」と反発を強めている。


前例がないことをもって問題がないとする『ペアライン』の記述は、国内でテロ攻撃によって壊れた原発が過去にないことをもって、原発がテロにも耐久性をもつと主張することと、同レベルの幼稚な詭弁でしかない。そして、先に行われた説明会の内容(「何が起きるかわからない」)とも矛盾するものである。

二風谷ダムが、日本の越流決壊ダム第一号にならなかったことは、ただ幸いであった。

独立行政法人「水資源機構」のパンフレット(PDF)
ダム決壊を防ぐための放流であることが明記されている。


洪水がダムの上から溢れないよう、洪水調節用ゲートを開き、「入ってきた洪水をそのまま下流に流す」ための「ただし書き操作」の説明文。

この文章に重大な「ごまかし」はないが、ただし書き操作は、本来、「放流量を徐々に流入量に近づけていく」というものではない。今回そのようなダム操作になったのは結果にすぎない。

操作規則では、水位上昇に合わせてゲートを開くことしか求められておらず、理想的に操作された場合、常に流入量と放流量が同値となる。

2003年8月洪水では、ダムの水位上昇が、ダム設計上の仮想の洪水(計画洪水)より、はるかに急激だったため、実際の洪水に対してゲート操作が後手後手にまわり、計画通りに流入量と放流量をあわせることができなかった。その結果として、「徐々に」流入量と放流量が近づくことになった。
そして計画どおりに放水しきれずに貯水を強いられた洪水量が、「計画を上回る効果」となった。

しかし、「ただし書き操作」においても水位上昇が止まらない事態は、ダム自体の安全を脅かす危険な状態であった。

「ダムが溢れても重大な問題が生じない」というなら、ダムの余裕があるうちから、「ただし書き操作」に入るのは何故か!?
「ただし書き操作」とは、ダムが洪水調節を諦める操作であり、下流の人命財産に重大な影響を与えることが確実だというのに!

「あふれても問題ない」といいながら、一方では全てのダムに、あふれさせないための「ただし書き操作」を設定し、多くのダムに、巨大な「非常用ゲート」が設置される。
この矛盾が意味するものは、いったい何であろうか?


1997年に二風谷ダムが完成して以来、ダム下流では1年おきに水害が発生している。水害を防ぐはずのダムができてからである。
この事態に、「ダムは何をしているのか?」という疑問が下流住民から上がっている。

これに対し、「洪水が増えたのは大雨が増えたためです」と何とも間の抜けた回答。
実は二風谷ダムは、完成以来2003年台風10号洪水までの間、一度も洪水調節をしたことがなかったのである。
ダムが水害を起こしてきたわけではないだろうが、ダムは頻発する水害を防いでもいなかった。


ダム下流の住民グループは、二風谷ダムの運用において、現在は利水需要が実質的に存在しないことから、「ダムを常時カラにして治水容量を増やし、かつ環境負荷を低減すること」を提案している。
これに対する北海道開発局の回答である。

洪水の一部を貯水し、残りを放流して下流の被害を軽減することは、自然調節式治水ダムの基本である。

二風谷ダムの現時点の運用計画では、計画洪水4100m3/sのピーク流入に対し、250m3/sを低減し、3850m3/sを放流することとされている。
このダムは、計画洪水を6%減らす治水能力を有する。
そして満水になった以後は、流入量と同量の放流を行い、治水機能を放棄する。(ただし書き操作)

自然調節式ダムであっても、容量に余裕があるほうが、治水能力が高まることはごく当然の基本であり、それが上流に「平取ダム」を計画する根拠でもある。

「ダムを空に」という提案を、「すべて貯水せよ」と、何の脈絡もなくスリ替え、それを否定することで、住民側が何か的外れなことを言っている「かのような印象を与える」、詭弁としてもあまりにも低レベルな戯れ言。

それとも、上流に平取ダムを建設したら、「洪水をすべて貯める」ことができるとでもいうのだろうか?

国土交通省北海道開発局は、二風谷ダムを治水専用ダムに転用できない理由として、「発電所に出ていけとはいえない」とも、住民に説明している。

しかし、平成14年度に示された治水計画(※)では、
二風谷ダムに利水容量は設定されておらず、まさに
「治水専用ダム」である。
治水専用ダムであれば、ダムに水を常時貯水しておく
必要はない。

また、新規計画中の平取ダムにおいても、現時点で
利水申し込みはないという。

※二風谷ダムの他、新規に平取ダムを上流の支流に
建設し、4300m3/sの洪水を3200m3/sに制御する
ものとしている。


堤防の内側にある住宅や農地が浸水したのは、
「川に流入できない支流の水があふれ」たためだとする説明文。

図では支流を本流に合流させる「樋門」が閉じられている。

しかし実際には、ダム下流浸水面積約300haのうち、
(A)樋門を閉じたための内水被害が約100ha、
(B)堤防整備が遅れていた地域の越流被害が約100ha、
(C)樋門が閉じられなかったため、本流の水が支流に
逆流して生じた被害が約100haである。

内水被害の主たる実態は、限界を超えたダムの「ただし書き操作」に際して、「下流堤防の樋門を閉じなかったことによる逆流被害」である。

図や説明文は、被害実態の解説としては、まるっきり逆のものだ。


「下流(平取)で水位を1m下げた」と、「ダムの大きな効果」をPR。洪水当日、ダム下流の平取の水位は、最高で28.3mであった。

別資料によれば、この「1m」の根拠は、「平成13年度水位流量曲線」(H-Q式)とされている。

しかしこの計算式で、ダム放流量発表値(5500m3/s)による平取の水位を計算すると、30.3mとなる。
また、水位28.3mにあたる流量は約3800m3/sであり、ダムの放流量とは大きな差違が出る。

洪水当日の膨大な土砂と流木の流入、ゲート部の異物等により、ダムから「操作通りの放流」が行われなかった可能性がある。

二風谷ダム下流、平取地点における平成13年度水位流量曲線(Q-H変換式)…青線


 Q=41.4*(H-18.74)^2
  Q:流量
  H:水位


厳密には、この近似式では、水位28mは適用範囲から外れているが、北海道開発局が「当日の水位予測」「ダムの効果」を「この式」で示しているので、あえて同じ式を用いて検証を行った。

仮にダム放流量の発表値が正しいとしてグラフを描くと(赤線)、ダムの水位低減効果は、「1m」という発表の1/5以下になると見られる。


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