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二風谷ダムに生じた「異常事態」とその影響

二風谷ダムには5万m3の流木が滞留した

8月10日朝の二風谷ダムの様子(北海道開発局資料より)

豪雨による流入量増加に耐え切れず
「ただし書き操作」を行う二風谷ダム

「ただし書き操作」とは、ダムの越流決壊を防ぐため、
下流の安全流量を上回る放水を行う危険なダム操作である。
湖面には膨大な流木が滞留。流木防止ネットは全く役立たずであった。

流木の量、5万m3という数値は、湖面に滞留し、
回収されたもののみである。

実際には概ね同量程度の流木が下流に放流されており、
湖底にも膨大な量の沈木となって堆積していると考えられる。



右岸クレストゲート(8.10午前)
厚く絡み合った流木層のすきまを通して放流が行われている。


左岸クレストゲート部(8.10未明)

(二風谷ダム記録映像より)

左岸クレスト部からは、相当量の流木が下流に流下した
(ダムに流入した流木の半分ほどは流下したとみられる)

多量の流木を下流に流す一方で、ダムから流出した構造物や、
流木が相当の時間、ゲート部に干渉していた。

流木防止のために設置されているネットも、
膨大な流木に対して最初より無力だったばかりか、
最終的には流木と絡んだまま、上部ゲートと干渉し、
やがて切断。流木と絡み合ったまま放流された。

 

オリフィスゲート周辺の様子(8.10午前)

多くの流木が、ダム底部の洪水調節用ゲートを通過したことがわかる。
湖底にも、多くの流木(沈木)が堆積していると考えるべきだろう。


ダム下流に堆積した膨大な流木

平取橋上流側
流木の山には、ダムから流出した
流木防止ネットが絡んでいた。

ダム下流には、この他にも随所に
多量の流木が堆積している。


ダム湖には全容量の1割にあたる290万m3の土砂が新たに堆積


二風谷ダムの土砂収支(北海道開発局資料より)


ダムの土砂堆積の様子(土木学会災害調査団資料に加筆)

もともと土砂堆積のきわめて多いダムであるが、
8月洪水によって、一夜にて、例年の2年ぶんの
土砂が、ダム湖内に堆積したとされている。

※「洪水後」の測量結果は、ダムの治水機能に
影響を与える42.5mから上の治水容量、
そしてゲート周辺の堆積状況が記されていない。

ダムの土砂堆積量の変化(土木学会災害調査団資料

二風谷ダムに見込まれている堆砂量は5.5百万m3である。


大きな「誤差」の原因は何か?

ダムデータの求め方

ダムで発表される流入量・放流量は、実際の流量を
何らかの形で直接測定しているわけではない。
いくつかの条件を定めた上で、ダム湖の水位変化と
ゲート開度より、計算によって求めたもの。

ダム流入量 = ダムによる調整量 + ダム放流量

ダムによる調整量 = 一定時間の水位の変化からの理論値

ダム放流量 = ゲート開度、水位からの理論値


想定外の外的要因が加わった場合、
各数値には、簡単に大きな誤差を生じてしまう。

 

洪水時にダムに流入した、多量の土砂、流木によって、
ダムの実際の放流量が、計算上の放流量よりも少なかった可能性がある。


二風谷ダムの通常操作では、ダム下部のオリフィスゲートを
開度3.5mで固定する「自然調節式」である(※)。

サーチャージ水位・治水容量の8割を超えたのちの
「ただし書き操作」においては、
おおむね、ダム貯水位が1cm上がるごとに、
同ゲートを1cmずつ開けていくように操作が定められている。

ゲート開度は最大で5.5mである(6200m3/s:設計洪水流量)。

また、ゲートを1cm開けると、ダム全体の放流量は約10m3/s増量する(水位48.5m前後のとき)。

 

一例として、オリフィスゲート部に土砂堆積、流木の干渉が生じ、
高さ方向に平均30cmゲートが狭まった場合を考える。
この時の放流量は、ゲートを30cm閉じることとほぼ同じとなる。

10m3/s×30=300m3/s

オリフィスゲートが30cm狭まっても、下流との差違である1700m3/sには及ばない。
しかし、二風谷ダムの設計上の治水能力が「ピークカット250m3/s」であることを考えれば、
この数字がどのような意味をもつものか、おわかりになるだろう。

 

流木や土砂による放流量への影響は、実際には種々の条件が複合しているはずである。

ゲート部を直接塞ぐ形で干渉するほか、ゲート周辺に堆積したときの抵抗による流速の低下、
また洪水といっしょにゲートを通過する場合の抵抗や干渉による流速の低下、
ダム湖面を埋め尽した流木による湖内の流速の低下、等々が考えらる。

これらの諸要因の一つ一つについて試算を行い、どの要因がどれだけの割合で影響し、
実際の放流量にどれだけの影響を与えたのかを明らかにすることはできない。
しかし、膨大な土砂、流木がダムに流入・堆積・通過する事態において、
「計算どおりの放流」を行うことが、まったく不可能なことは明らか
である。

(※)2003年8月洪水では、7門あるオリフィスゲートのうち1門が使用不能だったため、
1門を閉鎖し、他の6門の開度を増すことで不足する放流量を補ったということ。


  

流木と土砂がダムにもたらす影響(図解)

大成建設コラム(週刊朝日)

「台風などで木が倒れると、それがダム湖まで流れてくることがあります。
流れてきた木をそのままにしておくと、ダムの取水口に詰まって放水の量を
コントロールできなくなり、あふれ出した水が洪水となって下流の地域に
流れ出してしまいます。
そこでダム湖では、ダムの上流側の両岸に網を渡した網場(あば)と呼ばれる施設で、
流れてきた流木などがこの網に掛かるようにしているのです。」

 


 

流木が詰まったダムの例(砂防ダム)


「水位と流量の矛盾」へ

 

 



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