(2006.7.10アップロード)
(2008.9.9 更  新 )

二風谷ダムは流木被害を防いだのか?


 2003年8月に発生した沙流川等日高地方の大雨洪水について、国土交通省河川局の発表資料「北海道『流木災害』」には、以下のように記述され、二風谷ダムの効果として、流木災害の抑止を強調しています。

 > ダムの「有・無」により流木被害に大きな格差
 > ○ダムのない沙流川上流や厚別川は、流木により被害が拡大。
 > ○沙流川下流は、二風谷ダムに貯留され、流木による被害はなし。

 同様の表現を、この洪水に関する数多くの発表資料に見ることをできます。


 沙流川とその支流には、数多くの「橋」が架けられています。まずは、沙流川本流二風谷ダムの上流、下流、また雨量が特に多く、被害が大きかった支流額平川の橋について、この豪雨災害による被災状況を見てみましょう。(ヤフー地図情報)



1.二風谷ダム下流
 河口〜二風谷ダム間

(表1)沙流川本流の橋と被災状況(二風谷ダム下流)

橋  名

被災状況

備 考
沙流川橋(国道) 被災せず 橋脚付近に洗掘発生
JR日高本線橋(JR) 被災せず  
高速道路沙流川橋(建設中) 被災せず  
紫雲古津大橋(建設中) 被災 建設中の橋脚が破損
荷菜大橋 被災せず  
新平取橋(国道) 被災せず  
平取橋 被災 橋脚が傾き橋桁が変型

【ダム下流・平取橋付近の様子】

橋桁が変型した平取橋
(沙流川本流・二風谷ダム下流6km)
平取橋直上流右岸の河畔林に堆積した膨大な流木
(2003/12)

【洪水当日の二風谷ダムとダム下流の様子】

引きちぎられた流木止めネットとともに、左岸クレストゲートから流れ落ちる高密度の流木(ダム管理所CCTV記録) 二風谷ダムから放流された高密度の流木。オレンジの浮きは流木止めネットの一部。
(2003/8/10 沙流川本流・荷菜大橋)




2.二風谷ダム上流
 二風谷ダム〜岩知志ダム間

(表2)沙流川本流の橋と被災状況(二風谷ダム上流)

橋 名

被災状況

備 考
二風谷ダム管理橋 被災せず  
長知内橋(国道) 被災せず  
池売橋 被災せず  
振内橋(国道) 被災せず  
幌去橋(国道) 被災せず  


3.支流額平川
 二風谷ダム貯水地〜豊糠橋間

(表3)支流額平川の橋と被災状況

橋 名

被災状況

備 考
額平橋(国道) 被災せず  
荷負本村農道橋 被災せず 橋桁まで冠水
貫気別橋(道々) 被災 橋桁まで冠水
併設の歩道橋が変型
車道橋は無事
アブシトエナイ橋 被災 橋脚倒れ橋が全壊
平取ダムサイト人道橋 被災 吊り橋の橋桁が変型
豊糠橋(道々) 被災 橋桁、欄干が一部破損

洪水と流木によって全壊したアブシトエナイ橋(額平川)


これらの検討から、以下のことがわかります。

1)二風谷ダム下流であっても、流木や洗掘によると考えられる橋脚被害が発生。
2)二風谷ダム上流であっても、沙流川本流の橋には被害がない。
3)支流額平川では半数ほどの橋が被災し、かつ被害規模が大きい。

 2003年8月洪水では、二風谷ダムにきわめて多くの流木がたまったことは事実です。北海道開発局は、二風谷ダムから回収された流木量を、5万m3〜6.7万m3であると発表しています。

 しかし一方では、流木止めネット(網場)が切断され、多量の流木を、高密度で下流に放流している事実があります。かつ、切断以前にも、多量の流木がネットをそのまま通過していました。

 単純にみるならば、ダムのゲート配置より、堤体に到達した右岸側2/3の流木は堤体によって止まり、また左岸側1/3の流木は、左岸クレスト放流部から、下流に放流されたと推定できるでしょう。

 さらに、ダム貯水地の湖底にも、本来の底が見えないほどに多くの沈木が存在していることが、二風谷ダム管理所より報告されています。この洪水でダムに流入し、堆積した量、また下流に放流された量を、現時点で正確に推定することは不可能と思われます。

 二風谷ダムには、確かに多くの流木がたまりました。しかし一方で、多くの流木を下流に流し、これに起因すると考えられる被害が発生しています。またダム上流であっても、沙流川本流では流木による被害は発生していません。

 北海道開発局のPRのように、被災状況を単にダムの上流、下流で分け、「ダム下流→被害なし」、「ダム下流→被害拡大」と短絡させることは、事実を正しくとらえていません。そして、被害が発生する根本的な原因やそこに存在する問題を無視しており、今後の防災を考える上で、非常に大きな問題があるといえます。

 流木による橋の被害が大きかった額平川は、ほぼ全域が北海道が管理する二級河川です。堤防の規模、橋の大きさや構造には、沙流川の本流とは格差があります。

 流木の発生が多い川であれば、橋桁を高くするなど、流木被害を受けにくい橋を作り、河川整備を行なえばよいでしょう。また、多量の流木が流入することが想定されていないダムに流木抑止の効果を求めるならば、ダム自体が流木災害の危機にさらされ、より深刻な壊滅的災害に結びつくおそれがあります。

 ダムは小さな放流ゲートから、水圧を用いて放流を行います。放流ゲートに、流木による詰りを生じた場合、ダムの貯水位は急激に上昇し、越流決壊を生じる危険があります。現在の技術では、洪水中のゲート詰りへの対処法はありません。(※)

 今後の防災のためには、橋が被災した原因をそれぞれ追求し、対策をとることが必要です。何でもかんでも「ダムの効果」に結び付け、誤った分析と事実と単なるPR発表を繰り返すのでは、国土交通省北海道開発局は、「国民の安全を守る使命」を、自ら放棄しているとみなしざるをえないでしょう。


※2006年2月に(旧)門別町富川地区で開催された河川整備計画変更案に関する説明会において、「平取ダムの流木」に関する懸念が、地元住民(町議会議員)から示されました。これについて北海道開発局は「検討中」とのみ返答し、明確な回答を行うことができませんでした。
 また2006年5月に北海道開発局が発表した「寄せられたご意見と河川管理者の考え方でも、沙流川の各ダムの流木対策には触れられていません。

 
2008年3月に日高町富川地区で開催された地域学習会(説明会)でも、平取ダムの流木対策に関する質問が住民より出され、開発局は「どのような方針でいくのかということも含めて未定」と回答しました。

※2006年8月洪水では、二風谷ダム上流の岩知志ダムで、係留してあった作業船がダム堤体に衝突し、ダム施設を破壊した上、放流ゲートに詰まる事故が起きました。この事故により、岩知志ダムは、正常なゲート放流ができなくなり、ダムの上を洪水が乗り越えて流出する事態が生じていました。
 幸いにダム決壊は免れましたが、本サイト『町が救われた理由』で指摘していた危険性と同様の事態が、実際に発生しています。


2006年 額平川

2003洪水では無事だった荷負本村農道橋
(額平川)
川床は強い洗掘を受け、橋脚の基礎が水面上に露出。次の洪水で洗掘が進めば倒壊する可能性。
架け替えられたアブシトエナイ橋。しかし流木対策はなく、2003年同様の洪水が生じれば、再び倒壊すると思われる。 2007年6月のアブシトエナイ橋。橋脚には、すでに長さ20mほどの流木が引っかかっている。また橋脚の下流には土砂が堆積し、川の流れに、橋脚が大きな影響を与えている。


二風谷ダムの屋外に展示されている「ダムが下流の流木被害を防いだ」とする資料。
しかし、二風谷ダム上流域で被災した橋梁は、すべて支流の橋である。
ダムのある沙流川本流では、ダムの上流であっても流木被害は生じていない。
本流のダムが、支流の流木被害を防止することはありえない。

ダム下流で被災した橋が少ないのは、下流域は狭隘な平地が多いため大きな支流がないこと、
また流木の発生源となる森林面積が小さく、かつ降雨量が小さかったためだろう。


※この図表は、長知内1号橋の記載位置がずれている。正しくは○印の左にある支流にかかる橋。
また、二風谷ダム下流で被災した、沙流川本流の平取橋、紫雲古津橋(建設中)が記載されていない。


●2003年8月洪水時の二風谷ダムの様子(動画)

●2006年8月洪水時の二風谷ダムの様子(動画)



戻る


 

[PR]口が臭う人の共通点…:臭いが見える対策は?